2013年3月28日木曜日

これが最大のきっかけとされておりますが、弁護士に対する苦情が増えてこれに対する弁護士会の対応が満足すべきものではなく、弁護士側が批判を浴び、これが積もり積もって弁護士自治の廃止までに至ったということです。 /福岡県弁護士会 福岡県弁護士会 主張・提言

 URLを見ればわかりますが、記事は固定URLにはなっていないようです。事件の経過とともに、内容が見つかりにくくなる可能性があるかと思われます。タイトル部分も記事からの引用ですが、イギリスのことみたいです。
 検索中の意外な発見でしたが、とっても参考になる資料です。探し物は「弁護士会会長の任期」でした。
平成24年度福岡県弁護士会  会 長 古 賀 和 孝(38期)

皆様の手元にこの月報が届く頃は春の気配がそこかしこに溢れ、どこか心躍るところがあるのではないかと思いますが、2月上旬の本日は、朝から厳しく冷え込み、強い風にあおられて灰色の空から粉雪が舞い落ちております。

皆様ご承知のとおり、英国では弁護士自治が一部内部的な統制という面では残っているものの、外部からの監査を受けるという意味で完全な自治権は既に剥奪されるに至っております。今回は、英国の弁護士事情を研究され英国の弁護士制度に関する著作もある、第二東京弁護士会所属吉川精一弁護士による大阪弁護士会での講演記録が入手できましたので、この報告に基づき、弁護士自治について触れます。この英国の経過は我が国の弁護士自治を如何にして維持し、国民市民の権利を擁護するかという観点から大変参考になります。
英国では何故弁護士自治が剥奪されたのか、幾つかの要因があると指摘されています。まず、一つ目ですが、弁護士会内での内部対立が挙げられます。企業法務を主として行うシティファームと所謂町弁と称することができるハイストリートロイヤーとの間で法律扶助や弁護士報酬、苦情処理について深刻な内部対立が起こり、弁護士会を取り巻く問題に関し結束ができなかったこと、会の運営に関し無関心な弁護士が増加したことが挙げられております。
二つ目に、高額な報酬を巡る裁判が起こり、これに対して弁護士会が適切な対応を取らなかったこと、これに対するマスコミの批判が展開され社会を揺るがすような大問題となったことがあげられております。
三つ目は、手厚い法律扶助政策を推進し、2005年には約20億ポンド(約3,000億円)を投じられていた扶助予算が財政問題の健全化を理由として効率化の方針に転換し、大幅に削減されるに至ったこと。これまで扶助事件を扱うことによって多額の報酬を得ていた弁護士に対する批判もこの動きを後押ししたようです。
四つ目、これが最大のきっかけとされておりますが、弁護士に対する苦情が増えてこれに対する弁護士会の対応が満足すべきものではなく、弁護士側が批判を浴び、これが積もり積もって弁護士自治の廃止までに至ったということです。弁護士に対する苦情処理も完全に弁護士会から独立した第三者がおこなうということで、OLC(Office for Legal Complaints)という機関が日常的にはオンブズマンを任命して、オンブズマンが苦情処理をおこなうというシステムを作りました。メンバーは法律とは全く無縁な一般人が選任されます。このオンブズマンは調査権限もあり、文書の提出などを命じる権限があります。苦情申立に理由があると認めると報酬や費用を減らせとか損害賠償を命じるなどの措置を命ずることができます。最も重要なことは申出人の同意を条件として、オンブズマンの命令に弁護士側が異議を述べることができず、その命令が確定してしまうことです。確定した場合には裁判所の命令で執行にまで進みます。犯罪的な弁護活動に対する弁護士会の対応は比較的上手くいっているとのことですが、処理遅滞など日常的な苦情への対応には非常に問題が多いということで、それが大きな批判に繋がっていったといわれています。
従来英国では、弁護士の苦情処理や或いは懲戒手続などの費用を弁護士会費で負担していたようですが、その費用が膨大になり、先のシティファームの弁護士からは自分たちに関係ない費用負担は不合理であるとの理由で、苦情対応を弁護士会から切り離した方が良いとの判断を持つような態度が醸成されたようです。そして、弁護士自治の廃止を決めた2007年のLegal Services Act法の制定の際、弁護士会はほとんど反対の声を上げなかったようで、先に述べました弁護士会内部の亀裂が背景にあったようです。
現在英国では、ABS(Alternative Business Structures)という制度ができ、弁護士が他の職業、つまり例えば大手スーパーマーケットとパートナーシップを結び、弁護士業務に参入することができることになったそうです。正に、ビジネスの面から生き残りをかけて活動する業態があります。
その他詳細な点にまで指摘が及んでおりますが、少なくとも上記した各指摘は、私共にも直接的に、もしくは間接的に当てはまる問題点を再認識しております。弁護士自治は、国民市民の基本的人権の擁護、社会正義の実現に向けて付与されたものであって、所与の制度では一切ありません。私共は日々研鑽を積み、信頼を勝ち得る弁護活動を行う必要があります。現在執行部では相次ぐ不祥事に対して、弁護士自治の維持の観点から必要な対策を取るべく、常議員会に諸策を提案し議論を頂いているところです。残りの任期も少なくなりましたが、英国の例を反面教師として学び、最善を尽くしたいと思っております。

引用:福岡県弁護士会 福岡県弁護士会 主張・提言

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