公訴の取消をするのが検察の名誉を守る、というかこれ以上傷つけない唯一の道
かもしれません<元検弁護士のつぶやき>
鹿児島県警自白強要事件(その3)
被告全員が無罪主張、捜査巡り訴訟も 鹿児島県議選違反(asahi.com 2006年01月06日17時29分)
朝日新聞が相当強い関心を寄せているようです。
既にザ・スクープで既報ではないかというご意見もあるようですが、徹底的に明らかにして報道してほしい問題です。
検察の起訴は妥当だったか?
起訴は2003年の何月ころかはっきりしませんが、同年7月ころに第1回公判があったようです。
検察は4回の会合の日を特定していなかったが、弁護側が再三求め、昨年7月に2回分を特定した。
「会合の日」というのは、つまり買収金授受の日ということなんでしょうね。
検察は、このような大事な日付を約1年も特定しなかった、ということは特定できなかったのでしょう。
つまり、特定できる証拠が起訴時点でなかったと思われます。
はっきり言って、これでよく起訴したもんだ、というのが正直な感想です。
アンビリーバボーと言ってもいいです。
そして、ようやく2回分を特定したと思ったら
その2回分について、弁護側は公判で、中山被告が同窓会などに出席していたアリバイを明らかにしている。
何をかいわんや、ですね。
検察として、これほどみっともない事件はそうはないと思います。
この記事は、「ちょっと変だよ、最近の検察」カテゴリにも登録することにします。
踏み字問題
「お父さんはそういう息子に育てた覚えはない」「早く正直なおじいちゃんになって」 03年4月中旬、志布志署の取調室。任意の取り調べ中、ホテル経営の男性(60)=買収容疑で逮捕、起訴猶予=の足元に並べられた用紙3枚に、そんな文言があった。 書いたのは県警の警部補。男性の両足首をつかみ、無理やり紙を踏ませたという。男性は自白を強要され、「精神的、肉体的苦痛を受けた」として、1年後、県に200万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こした。
取調べ技術として敢えて言えば、極めて稚拙と言うべきでしょうが、これは立派な精神的拷問です。
取調べの体をなしていません。
そして件の警部補は
05年11月の証人尋問で「真摯(しん・し)に反省し、取り調べに応じて欲しかった」と述べ「1回置いた」と主張した。
「1回置いた」というのは、被疑者の足を紙の上に「置いた」ということなんでしょうね。
「そんな事実は一切ありません。」と完全否定するよりは可愛げがありますが、これは当時の被疑者の方の話をそのまま認めるべき証言でしょう。
そして言うにことかいて、「真摯に反省し、取り調べに応じて欲しかった」などとは、あきれかえってしまいます。
私が取調室で被疑者からこんな言い訳を聞いたら、懲戒覚悟で、「お前、なめとんのか。」と言ってしまいそうです。
岡村先生が言われるように、公訴の取消をするのが検察の名誉を守る、というかこれ以上傷つけない唯一の道かもしれません。
接見状況の調書化
報道を引用しますと
国賠訴訟弁護団によると、03年4~8月に被告と警察署などで接見した20人以上の弁護士とのやり取りが調書化された。総数は県警と地検合わせて75通にも及ぶ。 これまでの弁論で、国・県は「供述の変遷を明らかにするために、接見内容の調書を取ることは当然行うべき捜査だ」と主張。一方、増田博団長は「接見内容が筒抜けの状態になれば、適正な刑事弁護はできない。これを組織的に行っており、非常に悪質だ」と指摘している。
ということですが、弁護団の主張が、取調べで接見状況を聞くことが問題なのか、それを調書化することが問題なのかはっきりしません。たぶん両方を問題にしているのだろうと思います。
一般論として、捜査官が被疑者と弁護士との接見状況を聞いたり調書化することが、直ちに又は当然に違法になると言えるかどうかよくわかりません。
私が、検事として取調べをしていたときは、取調べ状況が弁護士に筒抜けになることは当然のことと思っていましたし、弁護士になってからも、その感覚の延長として、接見状況が被疑者の口から刑事や検事に伝わることは想定内のことと考えています。
但し、本件に関する限り、弁護士を排除する目的のもとに接見状況を聞いている疑いがありますので、違法と判断される可能性が十分あると思います。
続報がありますので一緒に書いておきます。
当時の捜査員から聞き取り 鹿児島県議選違反事件(asahi.com 2006年01月06日17時33分)
鹿児島県警が同県議選に絡む公選法違反事件の捜査で、選挙区内の男性に架空の供述を強要し、うその自白調書を作成していた問題で、県警は6日、事件に携わった当時の捜査2課員らから聞き取りによる事実確認を始めた。捜査1課と警務部などが行う。
聞き取りの結果をどう発表するつもりなんでしょう。
違法な取調べは確認できなかった。
とでも言うのでしょうか。
それとも
自白強要の事実があった。
と認めるのでしょうか。
どっちにしても県警の信頼回復はできないでしょう。
「違法な取調べは確認できなかった。」といっても誰も信じないでしょうし、認めたら認めたで「やっぱりか」ということになるだけでしょうから。
ともかく、このような聞き取りをしなければならないほど、鹿児島県警が追い詰められていることは間違いないようです。
身から出た錆びとしか言いようがありません。
モトケン (2006年1月 6日 18:34) | コメント(2) | トラックバック(1) このエントリーを含むはてなブックマーク (Top)
引用:鹿児島県警自白強要事件(その3) - 元検弁護士のつぶやき
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