2013年2月17日日曜日

被害者遺族としても、より多く知ることによってより深く傷つくことがあること を考えて<元検弁護士のつぶやき>



少年審判の被害者傍聴問題

少年審判の傍聴に賛否 被害者団体、都内で会合(asahi.com 2007年11月25日22時49分)

 「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の大会では、97年の神戸連続児童殺傷事件で次男を亡くした土師守さんが、少年審判では「蚊帳の外」に置かれたと主張した。

 「被害者として事件の背景を知りたいと思うのは至極当然のこと」。加害少年の更生のためにも、傍聴だけではなく、被害者が質問する権利も認めてほしいと訴えた。

 気持ちは分かるのですが、被害者遺族としても、より多く知ることによってより深く傷つくことがあることを考えて制度を検討すべきだと思います。
 つまり、被害者遺族にもそれなりの覚悟が求められます。
 被害者遺族の傍聴がどういう意味で加害少年の更生のためになるのかも問題です。

 制度設計を考えるにあたっては、制度に関与する人間がどのように考えてどのように行動するのかを的確に予測することが重要だと考えていますが、裁判手続に関する被害者側関与の問題については、

 事件の多様性に伴い、被害者遺族の感じ方や対応が極めて多様であること

から、その中の一定の対応を想定して制度設計を行うと、当然想定されうる想定外の被害者にとっては好ましくない制度になるおそれがあります。

 被害者遺族は法廷の中ではこのように考え、行動すべきである

という基準でもあれば、その基準に基づいて制度設計をすることが可能であるかも知れませんが、「法廷内におけるあるべき被害者遺族像」というものが議論されたということを知りません。
 もちろん、ことは法廷内の問題にとどまりません。
 
 単に、一部の大きな声に応えるような形での拙速な制度変更は将来に禍根を残すことを危惧します。

 一方、「被害者と司法を考える会」の集会では制度への懸念を論じた。交通犯罪で息子を亡くした片山徒有さんは、傍聴の実現を「ある種の制裁を裁判所に期待する流れの中にある」と指摘。家裁調査官を務めてきた伊藤由紀夫さん(全司法労組)は「狭い審判廷で被害者と加害者が相対すれば互いに興奮してしまう。傍聴するよりも裁判官が裁量で遺族に丁寧に説明する方が真実もわかる」と話した。

 こういう指摘にも耳を傾けるべきでしょう。

 現実社会に理想的な制度というものはあり得ません。
 何かを改善しようとすると、別の何かが悪化するのが当たり前です。

 目的は正当でも具体的な制度改変に伴う弊害というものが常に想定されるのですから、それをしっかりと検討したうえで、トータルとしてより良い制度になるように制度設計をしていただきたいと切に願います。
モトケン (2007年11月26日 10:00) | コメント(21) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:少年審判の被害者傍聴問題 - 元検弁護士のつぶやき


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