「反省すべきは反省し」では検察の視点を考えて欲しい<元検弁護士のつぶやき>
医療側のみなさまへ(特に最近来られた方へ)
大野病院事件の判決を受けて、昨日今日と、エントリを二つ書きました。
「誠実な医療の重要性」と「反省すべきは反省し」です。
これらのエントリの宛先は、医療側の皆様でした。
「誠実な医療の重要性」は、医師の皆様、自分たちの医療行為に自信を持ちましょう。裁判所にはきっと通じますよ、という気持ちを込めて書きました。
「反省すべきは反省し」は、大野病院事件の起訴に至る経緯において、医療側に反省すべき点はないかという問題提起でした。
いずれも医療側の皆様に自らを振り返って、いわばプラス面とマイナス面を正当に自己評価してもらいたいというエントリでした。
しかし、返ってくる反応は、全てとは言いませんが、ワンパターンの警察・検察が悪い、マスコミも悪い、という他者批判が目につきます。
このような他者批判は、ある意味で自己中な視点です。
最近活発な議論が行われてます「医療不信の実態とは?」で、私は「客観視」というキーワードを強調しました。
「医療不信の実態とは?」ではまず非医療者側の不信感の客観視を求めたわけですが、上記の「誠実な医療の重要性」と「反省すべきは反省し」では、医療側に客観視を求めたエントリであるとも言えます。
客観視とは、自分以外の他者の視点で自分を見ることだと言えます。
「誠実な医療の重要性」では裁判官からの視点を意識してもらいたい、「反省すべきは反省し」では検察の視点を考えて欲しい、と言えばわかりやすいでしょうか。
しかし、法律の素人の医師には、裁判官の視点も検察官の視点も分からない、というのが本音でしょう。
だからこそこのブログがあると言えます。
医療崩壊に関する一連のエントリにおける議論は、まさに司法側から医療側に対して法律家の視点を説明するものであったわけです。
当時から参加されている医療側の皆さんにとっては、またモトケンさん切れそうだな、というところかも知れませんが、最近このブログに来られた医療側の皆さんには、ぜひ読んでいただきたいなと思います。
はっきり言って膨大ですから、大変だと思いますけど、読む価値はあると思います。
読む暇がない方も、訴訟リスクをを考える以上は、法律家のものの考え方というのはどういうものだろうか、という好奇心くらいは最低持っていただきたいと思います。
それが、相互理解の第一歩だと思いますので。
わざわざ法律家が開設しているブログに来て、医療側と司法側の相互理解を考えないなんていうのは、もったいないと思いませんか?
しかし、医療側の皆さんは、自分の文章がどう読まれるかについて、あまり深く考えてない人が多いのかなと感じることがあります(^^;
要するに、素人相手の説得の技術が下手くそということですが(失礼)
そうであるならば、他者批判をするよりは、自分たちの正当性を訴えるほうがいいんじゃないかなと思います。
モトケン (2008年8月25日 19:45) | コメント(15) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマーク (Top)
引用:医療側のみなさまへ(特に最近来られた方へ) - 元検弁護士のつぶやき
<コメント欄の一部>
No.1 デ・ロッシ(勤務医) さん | 2008年8月25日 20:56 | 返信 (Top)
>モトケン先生
先生の心優しいメッセージ、しっかり伝わっております。
数日前から、そのことを書き込もうかと思っていたのですが、なかなかタイミングがつかめず・・(汗)
ほとんどROMですが、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
No.2 Med_Law さん | 2008年8月25日 21:22 | 返信 (Top)
モトケン先生から、優しく、諭していただいている気になっています
ふつつか者で、粗忽者ではありますが、引き続き宜しくお願い申し上げます
No.3 法務業の末席 さん | 2008年8月25日 23:29 | 返信 (Top)
今回の大野事件での無罪判決は、被告人の加藤医師の医療に対して真摯に取り組んできた実績、言うなれば加藤医師の「医療に対する誠実さ」を、法廷審理を通して裁判長が感じ取った結果だと思います。
「誠実な医療の重要性」は、医師の皆様、自分たちの医療行為に自信を持ちましょう。裁判所にはきっと通じますよ、という気持ちを込めて書きました。
このモトケンさんのコメントは、裁判官という人間が被告人という人間の行為結果を裁く、すなわち人間が人間を裁くのが刑事裁判の本質である以上、最後は裁判官の人を見抜く目に被告人の人柄がどう写るかで決まるということを言いたいのだと思います。極論すれば刑事裁判において法令解釈だの証拠の評価だのは、被告人の人間性を評価する為の単なるモノサシであり一介の道具に過ぎず、それに拘泥するのは裁判の本質ではない。私は裁判をこのように感じるときがあります。
医療側の皆さんは、自分の文章がどう読まれるかについて、あまり深く考えてない人が多いのかなと感じることがあります
私も医療者の主張に政治的センスが欠けている印象を持ちます。
世間大衆を説得して味方に付けるには、言葉が多少難解であっても、分かり難い表現であっても、主張する内容の理屈が正しければ良いじゃないか、と思っていらっしゃる医師の方々多いように感じるのは残念です。分かりやすく噛み砕いて説明する努力、関心の無い人々にも興味を持って聞いて貰えるように工夫する努力、受け手が反発するような表現を避ける努力、気長に腐らずに何度でも繰り返しにこやかに説明する忍耐の努力、…等々の面で今一つ足りないかなぁ。以前よりこのように感じるシーンが結構ございます。
要するに、素人相手の説得の技術が下手くそということです
医者は身に付けた医療技術の高さで評価が決まる、口下手や口上手は医師の能力には直接関係ない。このようにお考えの医師の方々は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
弁護士であるモトケンさんも、社会保険労務士である私も、法律や国家行政制度の高度な知識がその資格の根源です。ですがそうした頭に蓄えた専門知識やノウハウを、法律や行政手続に疎い素人さんに上手に説明出来なければ依頼人から評価して貰えません。説明能力、解説能力というのは我々士業者にとって、法律の条文や専門知識を記憶する能力より遙かに重要な能力です。
(あ~別館では、説明能力に疑問符が付く弁護士の実例も体験できますが…)
私自身は医師の方々を非難する意図はありません。むしろ医師の方々の味方をして、医師が働きやすい医療体制の実現に微力ですがお役に立てて、医療崩壊の心配が解消されれば嬉しいと思うのです。ですが現状、このモトケンブログで見聞する医師の方々の主張の半分は、気持ちは理解するけどあんな言い方をしたら逆効果だなぁ…と感じる部分があります。そこが応援団の一員としてもどかしく、また残念で、敢えて苦言を呈すコメントを致しました。
医師の皆様方、お気を悪くされたかも知れませんが、私の真意をご理解頂ければ幸いです。
引用:医療側のみなさまへ(特に最近来られた方へ) - 元検弁護士のつぶやき
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